日本では、旧暦9月9日は現在の10月中旬ごろに当たり菊が見ごろを迎える時期。菊は邪気を払う力を持つと信じられていたこともあり、「菊の節句」とも言われ、菊の花を観賞し、菊湯、菊枕、菊酒、菊の着せ綿などにより無病息災や不老長寿を願いました。
もともとは平安時代の貴族の習慣で、重陽の日に菊の花に植物染料で染めた真綿を被せ、明くる早朝に朝露を含んだ綿を菊より外し、その綿で体を拭えば菊の薬効により無病であるとされました。
室町時代には菊酒という菊を浸した酒を飲むことも行われるようになりました。
「折形」(おりがた)とは、物やお金を贈る際の和紙による包みで、そこには、日本古来の考え方に基づく原則と美意識、相手を思う心が込められています。
元来折形は、武家の秘伝で、家々の中での口伝によって守り伝えられましたが、江戸時代になると和紙が安価に大量に出回り、しだいに庶民の生活に溶け込み、冠婚葬祭に配る赤飯や餅に添える塩やきな粉を紙で包んで添えるというような使い方をするようになりました。
戦前は女学校などで作法として授業に取り入れられ、各家庭で必要なときに自分で作っていたそうです。
しかし、第二次世界大戦終了後、学校教育が一変し、学校教育で折形礼法が扱われることはなくなりました。
和紙特有の品の良さと「折形」の端正な美しさ、その歴史的な背景にあるおもてなしの心や相手に寄り添う気持ちを伝えられる折形の素晴らしさが再認識され、日本の伝統的な文化の一つとして受け継がれていくことを心から願っています。